ニャンゴシ君のやさしい相続講座〜自筆証書遺言と公正証書遺言、どっちがいいニャ?〜

ニャンゴシ君

ねえ佐々木先生、遺言って手書きでもいいって聞いたニャ。でも公正証書っていうのも聞いたことあるニャ。遺言にも形式があるニャ?

弁護士 佐々木

ええ、遺言にはいくつかの法律で定められた方式があり、法律に沿った形で作成しないと無効になります。実際によく使われるのは『自筆証書遺言』と『公正証書遺言』の2つがあげられますね。

ニャンゴシ君

『自筆証書遺言』と『公正証書遺言』でなにか違いがあるニャ?

弁護士 佐々木

それぞれ特徴があり、適している場面の違ってくるので、詳しく説明しますね。

目次

1.自筆証書遺言とは?

民法では、遺言の作成形式をいくつか定めており、法定の形式で作成しない場合、または、作成したけれども法律の定める形式・要件を欠く場合、『無効』となります。この点が遺言作成の難しいところです。

自筆証書遺言とは、遺言者が、その全文、日付及び氏名自書し、これに印を押すことによって作成する形式の遺言のことをいいます(民法968条1項)。
遺言の内容を本人が自由に書くことができ、思い立ったときにすぐに変更できる上、費用がかからないというメリットがあります。

しかしその一方で…

  • 内容や形式に不備があると無効になるリスク
  • 紛失や隠匿、改ざんのおそれ
  • 家庭裁判所での検認手続が必要
    など、注意すべき点も多い方式です。

ここが変わった!改正ポイント①:財産目録の自書不要

令和元年の法改正により、遺言本文は自筆でなければなりませんが、財産目録はパソコンで作成してもOKになりました(民法968条2項)。

不動産の場合、所在、地番・家屋番号等により、当該物件が特定できれば、登記事項証明書の一部分や、コピーを財産目録として添付することも可能ですし、通帳のコピーを財産目録として添付することもできます(出典:ほうむ不動産の場合、所在、地番・家屋番号等により、当該物件が特定できれば、登記事項証明書の一部分や、コピーを財産目録として添付することも可能ですし、通帳のコピーを財産目録として添付することもできます(出典:法務省HP『03 遺言書の様式等についての注意事項』https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html)。

これにより、これまでの“手間やリスク”が大幅に軽減され、より実用的な選択肢として活用されつつあります。

ここが変わった!改正ポイント②:自筆証書遺言の保管制度とは?

また、法務局にて自筆証書遺言を有料で保管できる制度が開始され、保管された遺言については家庭裁判所の検認が不要になりました。

本人が法務局に出向き、専用の様式に基づいて保管申請を行う必要がありますが、法務局に保管してもらうことで、次のとおり、自筆証書遺言を利用しやすくなるというメリットができました。

  • 遺言は原本のまま保管され、改ざんや紛失のおそれがなくなる
  • 相続開始後、相続人が保管証や検索制度を通じて内容を確認できる
  • 検認手続が不要になるため、手続きがスムーズに
ニャンゴシ君

自分で書けるのは気軽だけど、間違えると全部無効でダメになるなんて、ちょっと怖いニャ…それに、ボクみたいに肉球しかないと字も書けないしニャ…!

弁護士 佐々木

法改正のおかげで、自筆証書も扱いやすくなりましたね。とはいえ、本文は手書きが必要ですし、保管制度は、内容や形式まで保証してくれるわけではないので、まだまだ専門家のチェックは大事ですね。

2.公正証書遺言とは?

公正証書遺言は、公証人役場で公証人が作成する遺言です。原則として証人2名の立会いが必要ですが、公証人が作成に関わるということから、信頼性が非常に高いのが特徴です(民法969条)。

  • 内容が法的に適切に整理される
  • 公証人が、関与して作成されており、遺言の内容に、本人の意思が反映されていることまで担保される
  • 原本が公証役場に保管される(紛失のおそれがない)
  • 家庭裁判所での検認が不要
弁護士 佐々木

作成時に、公証人が、遺言の内容を、直接、遺言者と証人に読み聞かせたり、閲覧させたりして内容を確認するので、あとで、遺言作成時の意思能力が争われるという危険も避けることが出来ます。

ニャンゴシ君

これなら安心ニャ。でもちょっとお金がかかるニャ?

弁護士 佐々木

弁護士報酬のほかに、公証役場に作成費用がいりますね。財産の額によって手数料が変わりますが、だいたい、数万円〜数十万円程度が相場です。ただ、トラブルを防げる安心感を考えれば、十分価値があるので、おすすめの作成形式です。

3.どちらを選べばいい?

では、実際にどのような場合に、どんな遺言の形式を選択すれば良いのでしょうか?ケースバイケースですが、次のように考えるとよいでしょう。

  • とにかく費用をかけたくない → 自筆証書遺言(保管制度も活用)
  • 相続人の間に争いが起きそう/不動産が絡む → 公正証書遺言
  • 認知症が不安/病気で自書が難しい → 公正証書遺言(口述も可)

目安としては、コストパフォーマンスをとりたいならば自筆証書遺言、多少の費用がかかっても、内容までしっかりと記録を残して将来的なトラブルを予防しておきたいのであれば、公正証書遺言を選ぶと良いでしょう。

🐱~ニャンゴシ君のひとこと~

弁護士 佐々木

将来のトラブルを避けるには、やはり専門家の助言を受けながら作るのが安心です。この点、《コラム》『遺言が“ある”と“ない”とでは雲泥の差』も役に立ちますよ。

ニャンゴシ君

なるほどニャ〜。書き方だけじゃなくて、保管や内容の正確さも大事なんだニャ!

弁護士 佐々木

その通りです。当事務所では、遺言の内容設計から作成サポート、公証人との連携まで一貫して対応しております。ご不安な方はお気軽にご相談くださいね。

ニャンゴシ君

弁護士に頼めば“書いたけど使えなかった遺言”にはならないニャ!

相続・遺言作成に関するの法律相談は[こちら]

この記事を書いた人
【執筆者プロフィール①】
弁護士 佐々木 良次(ささき・りょうじ)
弁護士法人アストレイ代表(東京・品川)

製造現場での派遣勤務を経て一念発起し、駒澤大学法学部、法科大学院を修了。司法試験合格後は、名古屋の企業法務系法律事務所にて契約・労務・紛争対応を中心に経験を積み、令和6年4月に東京・品川にて弁護士法人アストレイを設立。

現在は企業法務を基盤にしながらも、離婚・男女問題や遺産相続といった個人事件にも幅広く対応。特に、財産分与や婚姻費用の複雑な算定、親権・監護に関する紛争解決に力を入れている。

趣味はバイクとキャンプ。
記事を書いた人を茶化す猫
【執筆者プロフィール②】
ニャンゴシ君

猫の社会的地位向上を夢見て、法曹界を志す。
以来、弁護士法人アストレイに“住み着き”、佐々木弁護士のそばで日々法律を学びながら、猫にも優しい社会の実現を目指している。
司法試験を受けたことはないが、「ボクの愛らしさはすでに合格レベルニャ」と本人(猫)は豪語。
趣味は、佐々木弁護士の家の壁紙での爪とぎと、冷蔵庫から勝手にちゅ〜るを取り出すこと。
最近のマイブームは、ネズミのおもちゃ
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