《コラム》離婚でペットはどうなる? “家族の一員”のゆくえ

ニャンゴシ君

ねぇ先生、離婚するときって、ペットの取り扱いってどうなるの?

弁護士 佐々木

うん、飼い主にとっては、“大事な家族の一員”なのだけども、法律上は“動産”として扱われているんだよ

ニャンゴシ君

そうニャのか。法律はシビアにゃ…先生は、財産分与の心配はないけど…

ニャンゴシ君

結婚どころか恋人もいないニャー

弁護士 佐々木

…その話はやめよう


目次

【1 ペットは財産分与の対象?】

日本の法律では、ペットは「動産(モノ)」として扱われます。そのため、離婚時の財産分与においても、家や車と同じように、共有財産に該当すれば分与の対象となります。

夫婦の共有財産である場合には、基本的にはその持分割合が問題となります。ただし、過去の裁判例を見ると、餌代や飼育場所の確保などの費用負担の問題が生じることもあるため、「今後、どちらが飼育する」というだけでは解決しないケースもあります。

現実には情や思い入れもあるため、感情的な争いに発展しやすいのがこの問題の難しさです。


【2 実際の裁判例:福岡家庭裁判所久留米支部・令和2年9月24日判決】

離婚に際して、3頭の犬の所有権や飼育費が争点となった事例を大まかにご紹介します。

当事者の主張:

  • 被告(妻)は、犬3頭については原被告が持分2分の1ずつの共有し、飼育場所の確保、餌代や獣医への支払いのため、扶養的財産分与として被告宅家賃相当額の月4万5000円の支払い続けるべきと主張。
  • 原告(夫)は、犬3頭については,財産価値はないので分与対象とはならない、ただし、今後も餌代を負担するほか,犬の散歩等にも協力するつもりと主張。

裁判所の判断:

  • 犬は原告と被告の共有財産と認定
  • 持分割合は、原告2/3、被告1/3
  • 積極的な財産的価値があるとは認め難い(0評価)が、「動産」として財産分与の対象
  • 今後も犬は被告宅で飼育されるため、原告は毎月、飼育費として以下の金額を負担すべきと判断
    • 家賃相当分:1万5000円
    • 餌代:2700円(1頭あたり900円 × 3頭)

このように、感情的な存在であるペットも、法律上は財産として扱われ、分担義務が生じる場合があります。


【3 実務のポイント】

  • ペットに関する明確な取り決め(名義・費用負担)は早めに整理しておくことが望ましい
  • 飼育継続を希望する側は、その分の負担も覚悟しておく必要がある
  • 感情的な対立が激しくなりやすいため、弁護士を介して冷静に話を進めることが重要
ニャンゴシ君

ゴハン代とか病院代も、ちゃんと話し合って決めといてほしいニャ。

弁護士 佐々木

そうだね。離婚になっても最後までお世話をするのが飼い主の務めだからね。


【まとめ】

ペットは「家族の一員」として大切にされる存在ですが、法律上はあくまで「動産」として扱われます。

とはいえ、ペットは、当事者にとってかけがえのない存在であることも多く、離婚の際には財産分与の一環として、その所有や費用分担をめぐって争いが起こる可能性があります。

適切な主張と円滑な解決のためにも、法的知識をもった専門家の助言を得ることが大切です。

▶ 当事務所では、離婚や財産分与に関するご相談を多数取り扱っております。ご希望に応じて、オンライン(Zoom等)または対面でのご相談が可能です。詳しくは、プロフィール欄にある【離婚特設ページ】をご覧いただくか、相談予約フォームからご連絡ください。

ニャンゴシ君

うーん……ペットが“モノ”ってのは、なんか納得いかないニャ。

弁護士 佐々木

分かるよ。でも現行法ではそう扱われているんだ。だからこそ、ちゃんと話し合って決めておかないと、あとで揉めることになるんだよ。

ニャンゴシ君

ボクが離婚する時は、先生のお世話をどうするかは、しっかり決めといてあげるニャ!

弁護士 佐々木

ニャンゴシ君は、私のことをペットだと思ってたんだね…。

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