
佐々木先生!知り合いが、経営する会社の不祥事をSNSで曝露されて炎上してるニャ!しかも不適切な動画や個人情報まで拡散されて困ってるニャ!



それは大変ですね。放置すれば一気に信用も売上も失うことになりかねません。SNSの情報は瞬時に広まり、炎上すると沈静化は難しいですからね。だからこそ、事実確認と初動対応が肝です。影響を最小限に抑える体制があるかどうかで、その後の明暗が分かれますからね。



知り合いは前に先生が言っていた削除請求とか発信者情報開示を急いでるみたいだけど、大丈夫かニャ?



たしかに、それらも手段の一つですが、拡散後は追いつきません。法的措置と並行して、即座に手を打つ必要があります。
1 法的対応の限界と時間差の壁



記事の削除や発信者情報開示は、対象となるのは記事毎ですし、手続きを始めても、結果が出るまで数週間〜数か月かかることもあります。その間に…
- 別サイトやSNSにコピー・引用が出回る
- まとめサイトや動画化で更なる燃焼
- 海外サーバーに転載されると削除が困難に
- 当初のトラブルとは関係の無い個人情報の拡散
- 批評の域を超えた、誹謗中傷・名誉毀損に発展する書き込みの出現



知り合いの会社も、最初の1本を消す前に別の場所でドンドン記事が出てきて、広がっていったみたいニャ…



それらを都度、一つ一つ消していくのは現実的ではありません。事後的な対応だと、文字通り「焼け石に水」ということになりかねません。
2 炎上で会社が負うリスク



炎上って、具体的に会社にどんな影響が出るニャ?



思っている以上に大変ですよ。次のようなリスクが挙げられます。
- 信用・ブランド価値の急落
→ 信用毀損は主要取引先や金融機関の対応にも直結し、顧客離れや契約解除が相次ぐ恐れがあります。回復には長期間と多額のコストが必要です。
- 採用難・人材流出
→ 求人応募の激減、既存社員の退職検討、士気低下が発生。特に優秀人材の流出は競争力を長期的に損ないます。
- 法的・行政対応の拡大
→ 監督官庁や消費者庁による調査・指導、訴訟・損害賠償請求への発展リスク。対応コストは莫大になり得ます。
- 二次炎上のリスク
→ 別媒体への転載や関連情報の新規拡散により、事態が再燃。関係者の個人情報暴露や更なる法的トラブルを招きかねません。



SNSの拡散力と社会的影響力は想像以上です。甘く見てはいけません。



なるほど…怖いんだニャ…
3 三つの柱で危機を乗り越える



会社や組織としては、ソーシャルネットワークの影響力を念頭に、3本柱を軸に対応することが重要です。
日頃の予防策
炎上を未然に防ぐためには、まず企業としての「炎上しにくい土台」を構築することが不可欠です。
危機管理マニュアルの策定と全従業員への周知徹底
SNS上で不適切な投稿や誤解を招く発言がなぜ起きるのか、その背景や過去事例を交えて具体的な対応方針を明文化す
ることで、各人が判断に迷った際の指針となります。
契約条項への危機管理義務の明記
外部委託先や提携先との契約書にも、危機管理義務やSNS運用ルールの遵守条項を明記することが重要です。これに
より、自社だけでなく関係者全体で同じ基準を共有できます。
環境整備(監視体制・報告ルートの確立・社内外の連絡体制の強化)
ガバナンスはルールだけでは十分に機能しないため、環境整備も欠かせません。具体的には、炎上の兆候を早期に察知す
るための監視体制、情報が上がってきた際に迅速かつ正確に共有できる報告ルート、そして社内外の関係部署が連携して
動ける連絡体制の強化が必要です。こうした積み重ねが、炎上を「起こさない」組織文化の基盤となります。
炎上時の即時即応
炎上が発生した場合には、初動対応のスピードが被害の拡大を防ぐ最大のポイントです。放置してしまうと、されるがまま
に拡散炎上してしまい、気づいたときには対応が手遅れとなるケースも想定されます。
事実関係の確認
まずは事実関係の正確な確認から着手し、憶測や未確認情報をもとに動くことは避けなければなりません。社内の関係部
署や当該事案に関わる担当者から速やかに情報を収集し、事実と誤情報を切り分けます。
必要に応じた対応
会社内に問題があることが確認された場合には、ただちに是正対応を進めます。例えば、商品やサービスに不備が発覚し
た場合には、自主回収や改善の公表といった実効的な措置を講じます。また、契約や法令違反など深刻な問題が含まれる
場合には、外部専門家の助言を受けながら今後の対応の策定と実施を急ぐ必要があります。
公式声明の迅速な発表
公式声明を迅速に発表することも不可欠です。炎上が事実無根な場合や誤情報によるものであるならば、即座にその旨公
表し、炎上に関して会社にも問題があるような場合、(必要に応じて)謝罪対応とともに、具体的な是正方針や今後の対
応スケジュールを明示し、関係者や顧客に対して誠意を持って説明します。このとき、曖昧な言葉や責任回避的な表現は
逆効果となり、さらなる批判を招くおそれがあるため、透明性と一貫性を確保した発信が求められます。
忘れてはならない!再発防止策
炎上対応において、単にその場を収めるだけでなく、将来、同様の事案が起こらないように再発防止策を講じることが、企
業の信頼回復には欠かせません。
原因究明と改善策の実行
発生した問題の原因を徹底的に究明し、根本から改善策を設計・実行します。この際、単なる表面的な修正にとどまら
ず、組織体制・業務フロー・意思決定プロセスなど、構造的な弱点を洗い出すことも重要です。
関係者への説明責任を果たす
関係者への説明責任を誠実に果たすことで、顧客・取引先・株主などステークホルダーの理解と納得を得ることができます。改善内容や進捗を定期的に発信し、「同じ失敗は繰り返さない」という姿勢を明確に示すことが、信頼回復への近道となります。
教育・研修の定期実施と検証
教育・研修の定期実施とその効果検証も不可欠です。SNSリスクやコンプライアンス意識を高める研修を継続的に行い、
受講者の理解度や行動変容を確認することで、組織全体の危機管理能力を底上げします。このような再発防止策は、同様
の事件が発生するリスクを大幅に低減するとともに、社会的信用を着実に取り戻すための土台となります。



見て見ぬふりで放置していても、炎上は収まらないんニャね!



そのとおり。予防、即応、再発防止——この3本柱を徹底してこそ、炎上鎮火の近道だし、企業の信頼を取り戻すことができるんだ。放置しておくことそれ自体がリスクであることを認識しないとね。
4 炎上は平時からの対策が命



これからの時代、SNSの無い社会は、考えられません。炎上は“いつ起こるかわからないもの”として備えるべき。平時からの体制づくりが、会社の信用を守ることになります。



行きすぎた書き込みは、確かにプライバシー侵害や名誉毀損として民事・刑事の責任を問われるけど、それで、全員が書き込みをやめるとは限らないニャ!企業として積極的なリスク管理は必須ニャ!
当事務所では、企業活動における炎上対応から、法務・コンプライアンス体制の整備、さらにインターネット上の風評被害や誹謗中傷への対応(記事削除・発信者情報開示請求など)まで、幅広いサポートを行っております。
顧問契約を通じ、平時からの予防策構築と、有事における迅速かつ的確な対応を一貫してご提供いたします。
貴社の信用・ブランド価値を守り、健全な企業運営を継続できるよう、法的観点から全力で支援いたします。以下の番号か相談予約ページより、お気軽にご相談ください。
弁護士法人アストレイ
☎ 03-6890-3976
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【執筆者プロフィール】
弁護士 佐々木 良次(ささき・りょうじ)
弁護士法人アストレイ代表(東京・品川)
製造現場での派遣勤務を経て、一念発起し駒澤大学に進学。法科大学院を経て司法試験に合格。
名古屋の企業法務系法律事務所で中小企業の契約・紛争対応を経験したのち、令和6年4月に東京にて弁護士法人アストレイを設立。
現在は、企業の法務体制構築、株主総会運営、役員構成の見直し、契約書の整備など、会社の法務支援を幅広く手がけている。
趣味はバイクとキャンプ。


【執筆者プロフィール②】
ニャンゴシ君
猫の社会的地位向上を夢見て、法曹界を志す。
以来、弁護士法人アストレイに“住み着き”、佐々木弁護士のそばで日々法律を学びながら、猫にも優しい社会の実現を目指している。
司法試験を受けたことはないが、「ボクの愛らしさはすでに合格レベルニャ」と本人(猫)は豪語。
趣味は、佐々木弁護士の家の壁紙での爪とぎと、冷蔵庫から勝手にちゅ〜るを取り出すこと。
最近のマイブームは、ネズミのおもちゃ