《コラム》取引基本契約書ってホントに必要? ~発注書・請求書だけで安心してませんか?~

ニャンゴシ君

ねえ佐々木先生、うちの会社、いつも発注書と請求書だけでやり取りしてるんだけど、それで契約は成り立ってるんだよニャ?

弁護士 佐々木

確かにそれでも“契約”は成立するけど、トラブルになったときに“何をどう約束したか”が曖昧になってしまうことがあるんだ。そんなときは『取引基本契約書』を交わしておくと、とても便利だよ。

ニャンゴシ君

ボク、契約書って大企業だけが使うものかと思ってたけど、中小企業でも必要なんだニャ?

弁護士 佐々木

むしろ中小企業こそ、トラブルが起きたときに備えておくべきなんだ。契約書があるかないかで、対応のスピードもリスクも全然違ってくるからね。

目次

1. 「契約書がない取引」の落とし穴

契約は合意によって成立し、発注書と請求書のやり取りだけでも、売買契約を締結することはできます。ただし、以下のようなリスクがあります:

  • 支払期日や遅延損害金の取り決めが曖昧
  • 商品の不良や納期遅延が起きたときの責任分担が不明
  • 契約解除の条件やタイミングが決まっていない
  • 債権回収や裁判対応の際、主張の裏付けが弱くなる
弁護士 佐々木

書面の契約がないことで、法的な主張に“根拠がない”とされてしまうこともあるよ。特に継続的な取引では、明文化された取り決めがないとリスクが大きいんだ。


2. なぜ「取引基本契約書」が必要なのか?

取引基本契約書とは、法律上の明確な定義があるわけではありませんが、一般的には、大量かつ反復的な取引を継続的に行う場合に、個々の取引ごとに契約書を作成する非効率を避けるため、あらかじめ当事者間で、共通に適用される基本的な事項を定めておく契約のことを指します。

発注書・請求書だけの関係では、その都度の内容しか記録されません。しかし、取引基本契約書があることで、ビジネスの“土台”が明確になります。特に以下のようなメリットがあります:

  • 長期的な信頼関係の裏付けになる
  • 責任やリスクの所在が明文化され、不要なトラブルを防げる
  • 問題が起きた際に、自社の主張の法的根拠となる
  • 個々の取引内容が変わっても、契約の一貫性が保たれる
弁護士 佐々木

契約書を整備することは“防御のための準備”なんだ。何かあったときに備える、会社の“保険”のようなものだよ。

3. 取引基本契約書でカバーできる主な項目

取引基本契約書には、次のような重要事項を事前に取り決めておくことができます。※これらは、ほんの一例に過ぎず、実際には取引の内容や業種・リスクの特性に応じて、契約条項の内容や構成も変わってきます。

  • 支払条件(締め日・支払日・遅延損害金)
  • 検収の方法と責任範囲
  • 納期や引渡し条件
  • 瑕疵担保責任や損害賠償の扱い
  • 契約の有効期間と解除条件
  • 再委託の可否や秘密保持義務
  • 反社会的勢力の排除条項
  • 管轄裁判所の合意

4. よくあるトラブル事例

  • 代金未払い → 支払時期・遅延損害金の定めがなかった
  • 納品遅れ → 納期や遅延に対する違約金が未設定
  • 発注取消し → キャンセルポリシーが不明確
  • 相手方の倒産 → 担保や保証条項がなく、回収困難
弁護士 佐々木

書面がないと“言った・言わない”の水掛け論に発展して、結局泣き寝入りになることも少なくないんだ。

ニャンゴシ君

ニャるほど……やっぱり契約書って、ボクたちの身を守る大事な道具なんだニャ!


5. 当事務所のサポート体制

当事務所では、顧問契約の一環として、取引基本契約書の作成や見直しを継続的にサポートしております。

  • 業種や取引先ごとにカスタマイズした契約書ひな形のご提供、条項内容の調整
  • 発注書のみで運用している取引に契約書を導入する際の、社内向け説明文やガイドライン資料の整備支援
  • 相手方との交渉方針のご相談、契約条項の精査・調整に関する継続的アドバイス

スポット対応とは異なり、企業活動の変化や新たなリスクに応じて、タイムリーかつ柔軟な対応が可能となるのが顧問契約の大きな利点です。

▶ 顧問契約についてのお問い合わせは[こちら]※法人様ご予約フォーム


🐱~ニャンゴシ君のひとこと~

ニャンゴシ君

契約書がないと、こっちが正しくても困ることがあるんだニャ…

弁護士 佐々木

そう。特に継続的な取引では、基本契約をしっかり整備しておくと、将来のトラブルをぐっと減らせるんだよ。いざという時に書面や証拠がない状況で裁判に臨むとなると、弁護士の胃も痛くなるからね。

ニャンゴシ君

しっかりとした契約書は先生の胃も守ってくれるんニャね!
うちもちゃんと契約書を準備しておくニャ! 何かあったら、佐々木先生のところに相談に行くニャ!

この記事を書いた人
執筆者プロフィール
弁護士 佐々木 良次(ささき・りょうじ)
弁護士法人アストレイ代表(東京・品川)

製造現場での派遣勤務を経て、一念発起し駒澤大学に進学。法科大学院を経て司法試験に合格。
名古屋の企業法務系法律事務所で中小企業の契約・紛争対応を経験したのち、令和6年4月に東京にて弁護士法人アストレイを設立。
現在は、企業の法務体制構築、株主総会運営、役員構成の見直し、契約書の整備など、会社の法務支援を幅広く手がけている。
趣味はバイクとキャンプ。
非公式マスコット
執筆者プロフィール②
ニャンゴシ君

猫の社会的地位向上を夢見て、法曹界を志す。
以来、弁護士法人アストレイに“住み着き”、佐々木弁護士のそばで日々法律を学びながら、猫にも優しい社会の実現を目指している。
司法試験を受けたことはないが、「ボクの愛らしさはすでに合格レベルニャ」と本人(猫)は豪語。
趣味は、佐々木弁護士の家の壁紙での爪とぎと、冷蔵庫から勝手にちゅ〜るを取り出すこと。
最近のマイブームは、ネズミのおもちゃ
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