
先生、ボク、少しだけ株を持ってる会社があるんだけど、“株主名簿を見せろ”って言ったら見せてくれるのかニャ?



ニャンゴシ君、株主には、会社の情報を“見る権利”があるけれど、なんでも自由に見られるわけじゃないんだよ。



じゃあ、“名簿を見せろ”っていうのは、株主ならどんなときにでも言える権利ってわけじゃないんだニャ?



もちろん。株主名簿を見る際に、会社法で定められた拒否事由があるときには、会社側も開示を拒否することもできるんだ。
1. 株主の閲覧請求とは
会社法は、株主が、会社の経営が適正に行われているかどうかなどをチェックするため、一定の書類について閲覧・謄写を請求する権利を認めています。
株主名簿も閲覧請求が認められている書類の一つで、株式会社は、自社の株主の名簿を作成し(会社法121条柱書)、その本店(株主名簿管理人がある場合にあってはその営業所)に備え置かなければなりませんが、株主および会社債権者は、営業時間内であれば、原則、いつでも株主名簿の閲覧または謄写を請求することができます(会社法125条1項、2項)。
そのほか閲覧請求が可能な主な書類
- 株主総会議事録(会社法318条4項)
- 取締役会議事録(会社法371条2項)
- 計算書類および附属明細書(会社法第442条3項)
- 会計帳簿・会計書類(会社法第433条1項)
これらの請求は、株主としての権利の一環であり、会社の健全な運営を監視する手段として位置づけられています。



閲覧できる書類に応じて要件も変わるから気をつけるニャ!
2. どんなときに拒否できるの?(帳簿閲覧を中心に)
株主は会社に対して閲覧・謄写を求める理由を明らかにすれば請求することが出来ます(会社法125条2項)。
株主名簿は、閲覧・謄写請求するために保有する株式数や期間の定めはありません。
会社は、会社法125条3項に該当する場合を除き、株主の請求を拒むことはできません。
【拒否できるケース】(会社法第125条3項)
- 請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき
- 請求者が会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
- 請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
- 請求者が、過去二年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。



でも、“拒否出来るケース”って、どうやって判断するのかニャ?裁判になったら、会社が全部証明しなきゃいけないのかニャ?



実際には、請求の背景やこれまでのやりとりなどを総合的に見て判断するんだ。拒否するには、会社側に、それなりの根拠が求められるよ。
株主名簿閲覧謄写を求める仮処分の裁判例として、今は存在しない拒否事由(旧会社法125条3項3号)が争われた東京高判平成20年6月20日があるけども、拒否事由の立証責任が、会社側にあることを前提としているね。
3. 閲覧を拒否された場合はどうする?
会社が閲覧請求を拒否した場合、株主は裁判所に対して閲覧謄写許可の仮処分の申立てを行うことができます。
この申立ては、会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所に対して行われます。裁判所は、「会社法第125条3項に列挙する例外事由」があるかどうか、会社の主張と株主の主張を比較して判断します。
4. 顧問契約によるサポートも
このような株主との対応に不安がある会社様には、顧問契約による継続的サポートがおすすめです。
- 閲覧請求が来た場合の初動対応の相談
- 閲覧対象の範囲・方法についての検討
- 裁判所への対応が必要となった場合の代理人対応
- 株主としての閲覧請求
こうした場面では、迅速かつ慎重な対応が求められます。
また、当事務所では、会社と株主との間で発生するさまざまな法的トラブル、株主総会の準備や運営、株主からの請求対応などについて、企業の実情に応じたきめ細やかな法的支援を提供しております。 法的リスクを未然に防ぐためにも、日頃から信頼できる専門家と連携しておくことが大切です。 お悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。
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🐱~ニャンゴシ君のひとこと~



株主でも、なんでもかんでも見せてもらえるわけじゃないんだニャ~。会社もきちんと対応しないといけないニャ。



そう。適切な対応が、場合によっては会社を守ることにつながるしね。



アストレイの事務所の帳簿なら、ボクのつぶらな瞳でお願いすれば、簡単に見せて貰えるのにニャ!



ニャンゴシ君、猫パワーを悪用するのは良くないね!


【執筆者プロフィール】
弁護士 佐々木 良次(ささき・りょうじ)
弁護士法人アストレイ代表(東京・品川)
製造現場での派遣勤務を経て、一念発起し駒澤大学に進学。法科大学院を経て司法試験に合格。
名古屋の企業法務系法律事務所で中小企業の契約・紛争対応を経験したのち、令和6年4月に東京にて弁護士法人アストレイを設立。
現在は、企業の法務体制構築、株主総会運営、役員構成の見直し、契約書の整備など、会社の法務支援を幅広く手がけている。
趣味はバイクとキャンプ。


【執筆者プロフィール②】
ニャンゴシ君
猫の社会的地位向上を夢見て、法曹界を志す。
以来、弁護士法人アストレイに“住み着き”、佐々木弁護士のそばで日々法律を学びながら、猫にも優しい社会の実現を目指している。
司法試験を受けたことはないが、「ボクの愛らしさはすでに合格レベルニャ」と本人(猫)は豪語。
趣味は、佐々木弁護士の家の壁紙での爪とぎと、冷蔵庫から勝手にちゅ〜るを取り出すこと。
最近のマイブームは、ネズミのおもちゃ