エステや学習塾、オンライン講座、サブスク型のサービス——継続的にサービスを提供する事業者には、特定商取引法や消費者契約法による独自のルールがかかります。「中途解約はお断り」と契約書に書けば防げる、と思っていませんか? ニャンゴシ君と佐々木先生が、事業者が押さえておきたい基本を整理します。
ニャンゴシ君オンラインで講座やサブスクを売ってる事業者さん増えてきたけど、途中で「やめたい」って言われたら困るニャよね。契約書に「中途解約はお断り」って大きく書いておけば、解約を防げるニャ?
弁護士 佐々木そう考える経営者の方は多いです。でも——それ、契約書に書いても無効になるリスクがあるのでオススメしませんね。
ニャンゴシ君ニャっ!? 書いても無効なのニャ!?
弁護士 佐々木一定の「継続的なサービス」を販売する事業者には、特定商取引法によって、お客さん(消費者)の中途解約権が保障されています。これは強行規定といって、契約で消したり制限したりすることはできません。「お断り」と書いても、その条項だけが無効になります。まずは、自社がこのルールの対象になるのかどうかから見ていきましょう。
対象になるのは「特定継続的役務提供」の7分野
特商法が「特定継続的役務提供」として規制しているのは、次の7分野です。
| 分野 | 対象になる契約期間 |
|---|---|
| エステティック | 1か月を超える |
| 美容医療 | 1か月を超える |
| 語学教室 | 2か月を超える |
| 家庭教師 | 2か月を超える |
| 学習塾 | 2か月を超える |
| パソコン教室 | 2か月を超える |
| 結婚相手紹介サービス | 2か月を超える |
いずれも、契約金額が5万円を超えるもの(入学金・受講料・教材費・関連商品を含めた総額)が対象です。
注意したいのは、名前ではなく、サービスの実質で判断されるという点です。たとえば動画編集やプログラミングを教えるオンライン講座は、「パソコン教室」の類型に当てはまる可能性があります。「うちはスクールと呼んでいない」「これは物販で、サービスは無料です」と言っても、実態が継続的な技能の教授で、教材などの関連商品まで含めた総額が5万円を超えるなら、対象になり得ます。
ニャンゴシ君「うちは関係ない」って思い込むのが、いちばん危ないニャね。
対象なら、事業者にかかる主なルール
対象になると、次のような義務・ルールがかかります。
| 主な規制 | ポイント |
|---|---|
| 書面の交付 | 契約前に「概要書面」、契約時に「契約書面」。記載事項や形式(赤枠に赤字・8ポイント以上)も法定。 |
| クーリング・オフ | 契約書面の受領から8日以内は理由なく解除可。書面不備や妨害があれば期間が延長。 |
| 中途解約 | 契約期間中はいつでも解約可(契約で排除できない)。請求できる額に上限、前払金は精算して返金。関連商品も対象。 |
| 広告・勧誘 | 誇大広告や、事実と違う告知は禁止。 |
| 書類の備付け(前払・5万円超) | 業務・財産の状況を記した書類を用意し、求めに応じて閲覧できるように。 |
まず書面の交付義務です。契約前に「概要書面」、契約時に「契約書面」を渡す必要があり、記載事項や形式(赤枠に赤字、文字は8ポイント以上)まで細かく決まっています。
クーリング・オフは、契約書面を受け取った日から8日以内であれば理由なく解除できます。しかも、事業者が「クーリング・オフできない」と嘘を言ったり、書面に不備があったりすると、8日を過ぎても解除できてしまいます。書面の出し方を雑にすると、期間が延々と延びるようなものです。
「キャンセル料は半分くらい」が通用しない理由
ニャンゴシ君途中で解約されたら、キャンセル料として受講料の半分(50%)くらいはもらっていいニャよね? それくらいは普通ニャ。
弁護士 佐々木解約のときに事業者が請求できる金額には、法律で上限が決められているんです。たとえばパソコン教室の類型だと、サービス開始前の解約なら、事業者が取れるのは1万5千円まで。開始後でも、「すでに提供したサービス分の対価」に加えて取れるのは、未使用分の20%か5万円のどちらか低い額が上限です。50%はもらえません。
弁護士 佐々木さらに大事なのは、前払いでお金を受け取っている場合、この上限額と提供済み分を差し引いた残りは返金しなければならない、という点です。開始前に解約されれば、ほとんど全額を返すことになります。つまり上限額は「自分の取り分」ではなく、「相手にいくらまで請求できるかの天井」なのです。教材や物販を関連商品としてセットで売っていれば、その商品も中途解約・返品の対象になります。
ニャンゴシ君もらうつもりが、逆にほとんど返すのニャ……!
広告・行政処分・クレジットにも要注意
ニャンゴシ君解約まわりは分かったニャ。広告やセールストークは自由ニャ?
弁護士 佐々木いいえ。効果を著しく事実と違って見せる広告(誇大広告)や、契約時に事実と違うことを告げる行為は禁止です。違反すると、お客さんに契約を取り消されるうえ、行政処分や罰則の対象にもなります。
ニャンゴシ君行政処分って、どのくらい怖いニャ?
弁護士 佐々木業務改善の指示、一定期間の業務停止命令、さらに役員個人への業務禁止命令まであります。書面の不交付や虚偽記載、誇大広告などには、罰金や懲役が定められているものも。「バレなければ」では済みません。
ニャンゴシ君クレジットの分割払いにすれば、トラブっても事業者は無関係ニャ?
弁護士 佐々木それも違います。個別クレジット(ショッピングクレジット)を使った継続サービスでは、お客さんはクレジット会社への支払いを止める形で、事業者へのクレーム(抗弁)を主張できます(割賦販売法)。クレジットを挟んでも、紛争からは逃げられません。
ニャンゴシ君じゃあ、特商法の対象さえ外れればセーフニャ?
弁護士 佐々木仮に対象を外れても、消費者契約法という一般ルールが別にかかります。責任を不当に免除する条項、高すぎる違約金、「黙っていたら同意したことにする」ような条項などは、無効になり得ますので、注意が必要です。
「他社もやっている」が、いちばん危ない
ニャンゴシ君でも先生、ネットには「うちは中途解約に応じません」って契約書に書いてる事業者もいるニャ。あれは何ニャ?
弁護士 佐々木あれは、違法な条項を書いて、知らないお客さんを黙らせているだけです。声を上げた一部にだけ示談金で対応する、というやり方も適法ではありません。
「他社もやっている」は、最も危ない判断材料です。いまは、お客さんの側もAIなどで契約書を読み込んでリスクを指摘してくる時代。杜撰な契約書は、早晩バレます。
「逃げる」より「整える」
大切なのは、発想の転換です。「解約を防ぐ」設計ではなく、「適法な範囲で自社を守る」設計にすること。提供済み分をきちんと精算できるよう初期費用の費目と精算方法を書面に明示しておく、関連商品の扱いを整理しておく、広告表現を裏付けのある範囲にとどめる——こうした“守りの設計”が、結局いちばんのリスク回避になります。継続サービスの契約書は、作り方ひとつで「守ってくれる盾」にも「自分を縛る弱点」にもなります。
ニャンゴシ君「逃げる」より「整える」ニャね。なんだかスッキリしたニャ!
当事務所では、継続的なサービスを提供する事業者の契約書チェック・整備や、特定商取引法・消費者契約法への対応について、ご相談を承っております。気になる契約書がある場合は、お気軽にご相談ください。
弁護士法人アストレイ
☎ 03-6890-3976
事業者向けご相談予約は【法人・事業者向け相談予約ページURL】
〒108-0075
東京都港区港南2丁目16-1 品川イーストワンタワー4階

